2026年版のランセット・カウントダウン欧州報告書が公表
2026年6月、Lancet Public Health誌において、2026年版のランセット・カウントダウン欧州報告書が掲載されました。この報告書は、気候変動と健康に関する報告書であるランセット・カウントダウン(the Lancet Coundown)のヨーロッパ版であり、学術・国連機関に所属する約60人の研究者が、2025年までのデータに基づき、気候変動と健康に関連する様々なテーマを体系的に分析・報告するものです。
本報告書では、気候変動はもはや将来のリスクではなく、現在進行形で、欧州の人々の健康を悪化させていることが指摘されています。例えば、2024年の欧州の熱関連死は約6万2775人と推計され、また、調査対象地域のほぼすべての地域(99.6%)で、2015~2024年の暑さに起因する死亡が増加傾向にあり、2050年までには約12万人とほぼ倍増するとの推計が示されています。それ以外にも、乳幼児や高齢者の高温への曝露が2.5倍増加し、軽度・中程度の身体活動が危険となる年間平均時間は60時間増加するなど、高温による直接的・間接的な健康影響が著しく高まっていることが、様々なデータから示されています。
感染症のリスクも急速に高まっており、2015年~2024年におけるヨーロッパ全域でのデング熱流行リスクは、1981年~2010年と比較して297%増加したと報告されています。なお、こうした健康被害の影響には偏りが見られており、例えば、熱波や干ばつによる食料不安に陥る確率は、低所得世帯の方が中所得世帯より10.9%高いことが示されています。一方、緩和策には前進も見られ、再生可能エネルギーの電力比率は2023年に21.5%と、2016年の8.4%から大幅に上昇し、クリーンエネルギー投資も拡大しています。
このように、気候変動に対する健康へのリスクが着実に高まっているデータが数多く示されている反面、本報告書では、気候と健康をめぐる社会的関与が低下していることが指摘されています。気候変動が健康に影響を与えている現状に対する危機意識を社会全体で高めていくためにも、環境問題と個々人の健康問題が関連しているプラネタリーヘルスの視点を普及・浸透させる必要性がますます高まっているといえます。