WHO・WMOが猛暑による労働者の健康リスク等を警告
2025年8月22日、世界保健機関(WHO)と世界気象機関(WMO)は、猛暑による労働者への影響に対処するための報告書兼ガイダンス(Climate Change and Workplace Heat Stress: Technical Report and Guidance)を公表しました。本報告書兼ガイダンスでは、極端な高温の頻度と強度が急増しており、屋外・屋内を問わず労働者の健康リスクが高まっていることに加え、気温が20℃を1℃上回るごとに労働生産性は2~3%低下していることや、世界人口の約半数が高温の悪影響を受けていることなどが指摘されています。
また、本報告書兼ガイダンスは、具体的な健康リスクとして、熱中症、脱水、腎機能障害、神経疾患などを挙げています。こうしたリスクは、すべての労働者に均等に生じうるわけではなく、特に農業・建設などの肉体労働に従事する人々や脆弱層(子ども、高齢者、低所得層など)で顕在化しやすいことが指摘されています。その上で、熱ストレスから労働者を守ることは健康面・経済面いずれの観点からも必要であり、持続可能な労働力確保のための解決策が急務であるとしています。
本報告書兼ガイダンスの内容は、2024年4月に国際労働機関(ILO)が公表した気候変動と労働者への影響に関する報告書とも整合しています。日本でも、2025年6月から改正労働安全衛生法が施行され、職場での熱中症対策が義務化されていることから、本報告書兼ガイダンスはILOの報告書とともに有益な参考資料となりそうです。プラネタリーヘルスの観点からは、政府や企業が暑熱による労働者の健康への影響を正確に把握するとともに、現場での作業見直しや都市緑化推進などの適応策を用いることで労働者の健康を保護する手段を講じていくことが重要といえます。